ベースオイルとは?

アロマテラピーにおいて、精油と共に使用する植物油の事をベースオイル(キャリアオイル)と言います。ベースオイルの目的としては、精油を希釈することです。

精油を肌に運ぶ(Carrier)ということから、キャリアオイルと呼ばれることもあります。

植物油は複数種類存在しており、それぞれに異なる特徴があります。

用途に沿って必要な植物油を選択しましょう。

 

 

精油を植物油で希釈する理由

1.塗布する場所への影響を緩和する

精油は様々な薬理作用を呈する高濃度の植物からの抽出物で、原液のまま直接塗布するとトラブルのもとになってしまいます

 

2.香料アレルゲン濃度を下げる

精油の含有成分の中には天然のアレルゲン(アレルギー反応を起こす物質)も含まれていますので、植物油で希釈しその影響を緩和することで、アレルギーの発症の可能性やアレルギー症状の発現の度合いを下げることが出来ます

 

3.精油を広範囲に塗布する

精油の原液を薄めることで、広範囲に精油の成分を届けることが出来ます。

 

4.精油と植物油の相乗効果

高品質な植物油には、とても有益な効能が多数あります。例えばお肌や髪への油分の補給もその部位が本来の働きを取り戻す、あるいはより良いコンディションを維持するために必要なことですね。

また、使用部位に精油の浸透を促し、効能の発現をサポートするので、ベースオイルの品質と精油の品質は相乗効果となります。精油だけでなく植物油の品質にもこだわりたいところですね。

 

 

ベースオイルの品質と精油の品質

 

■高品質な植物オイルの条件

①高温にせず低温で圧搾(冷温圧搾法)

熱を与えていないので、成分の劣化や栄養価の破壊がありません。植物の持つ純粋なオイルの成分のパワーをそのまま受け取れます。

②一番栄養価が高い、最初に絞った「一番搾り」のものだけを使用

オイルには様々な栄養素が含まれており、それらも塗布した時にお肌を滋養してくれます。ですが、2回目以降に絞ったものは栄養素が減っています。栄養価の高い一番搾りの部分だけを集めたオイルですので、使用感が違います。

  

 

 

植物油の栄養素

ベースオイルには、数々の必須脂肪酸が豊富に含まれておりますが、

その脂肪酸には、動植物が体内で合成できる脂肪酸と、体内では合成することが出来ず、外部から取り込むしかない脂肪酸とがあり、その体内で合成できない脂肪酸を「必須脂肪酸」と呼びます。

必須脂肪酸は体内で合成できない以上、食事で摂取するか、皮膚に塗ることで体に取り込むかどちらかが必要です。

  

 

 

必須脂肪酸の種類

また、その脂肪酸は構造の違いから、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。さらに、不飽和脂肪酸は一価と多価に、多価不飽和脂肪酸のほうはn-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-9系脂肪酸などに分類されます。

 飽和脂肪酸 パルミチン酸など

肉の脂身など動物性油脂に多い。植物性油脂ではココナッツオイルに多い。
常温でも固まる。
炭化水素の二重結合がない。

不飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 オレイン酸、パルミトレイン酸

体内で合成出来る。

常温でも固まりづらい。炭化水素の二重結合が1つある。

多価不飽和脂肪酸

オメガ3

オメガ6

オメガ9

体内で合成出来ない必須脂肪酸

炭素の2重結合が2つ以上ある

 

多価不飽和脂肪酸の種類

オメガ3(n-3)系脂肪酸

例:α-リノレン酸(ALA)

多く含む植物油:ローズヒップ油、ラズベリーシード油、ブラックベリーシード油、えごま油や亜麻仁油など

作用:抗酸化、抗炎症、抗アレルギー

3番目の炭素に二重結合がある脂肪酸をオメガ3(n-3)系脂肪酸と呼びます。α-リノレン酸は、皮膚細胞の修復を助ける作用があり、加齢肌やストレスなどで弱ったお肌にとても良いと言われています。顔の皺などをふっくらとさせ伸ばしてくれます。抗酸化作用があるため、関節炎や腱炎、アレルギー症状(湿疹など)の改善に役立つ可能性を示唆する論文があります。
体内に入ったあと、代謝されてEPA、DHAとなります。EPA、DHAは魚油にも含まれます。

 

 

オメガ6(n-6)系脂肪酸

例:リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸

リノール酸を多く含む植物油:ヘーゼルナッツ油、サンフラワー油、アルガン油、コーン油、大豆油、イブニングプリムローズ油、サフラワー油、ボリジ油、グレープシード油など

γ-リノレン酸を多く含む植物油:月見草油、ボリジ油など

アラキドン酸を多く含む食品:肉、豚レバー、卵黄

6番目の炭素に二重結合がある脂肪酸をオメガ6(n-6)系脂肪酸と呼びます。酸化しやすい特徴があります。成長や皮膚の機能維持に必要です。お肌に優しい成分であり、血中のコレステロール濃度を下げると言われています。

 

ニキビ肌や脂性肌にお勧めの成分 「リノール酸」

酸化しやすいという欠点はあるものの、リノール酸はお肌への有効性が高く、スキンケアの為に重要な成分と言われています。皮膚修復作用、皮膚再生作用、保湿作用があります。また、肌を柔らかくしなやかに、若々しく保つために重要です。というのもリノール酸は肌の重要な構成要素セラミドを構成しており、大気汚染や乾燥から皮膚を守ることや保湿に置いて非常に有益です。

ニキビが出来る方のお肌にはオレイン酸が多すぎることがあり、そこに対してオレイン酸が多いマカダミアナッツオイルなどを使用すると余計にニキビがひどくなってしまいます。そういった時はヘーゼルナッツなど、リノール酸を多く含むオイルを使用しましょう。普段はマカダミアナッツやスイートアーモンドオイルを使用されている方は、リノール酸を含むオイルはニキビのある場所限定で局所的に使われても良いと思います。

 

γ-リノレン酸

乾燥肌、脂性肌、敏感肌、混合肌・・・すべての肌タイプに良い成分で、湿疹や乾癬、ニキビなどのトラブルが起こりやすい肌にもお勧めです。お肌が柔らかく、ハリが出て若々しく瑞々しいお肌に。リノール酸は体内でγ-リノレン酸に変換され、ジホモγリノレン酸を経てアラキドン酸に変換されますが、この変換合成は加齢とともに難しくなりますので直接摂取することが必要です。お肌に塗るのもいいですが、食事などで適度に摂取するのもとても良いと思います。

 

オメガ7(n-7)系脂肪酸

例:パルミトレイン酸

パルミトレイン酸を多く含む植物油:マカダミアナッツ油など

抗炎症作用に優れているだけでなく、コラーゲンの生成と皮膚細胞の発達を促進する効果があると言われています。肌バリアを強めつつ肌を若く柔らかくし、コラーゲン層の増加による肌へのハリなどが期待出来ます。冬や花粉のダメージから肌を保護し、また、ダメージをカバーしてくれます。

 

 

オメガ9(n-9)系脂肪酸

 

例:オレイン酸

オレイン酸を多く含む植物油:マカダミアナッツ油、アルガン油、オリーブ油、グレープシード油

スキンケアに欠かせない「オレイン酸」

皮脂の成分のうち40%ほどを占めるオレイン酸。そのため肌に非常に馴染みやすく、水分補給や保湿効果にも優れている上にお肌の奥深くまで浸透しますので肌への働きかけに優れています。肌も柔軟になります。

ニキビ肌はオレイン酸の割合が高くなりすぎていることも多々あり、そのような時にオレイン酸が多く含まれている植物油を使用すると余計に悪化する可能性もありますのでご注意ください。マカダミアナッツを食べるとニキビが出来やすい人は、使用を控えた方が良いかもしれません。

 

その他の植物オイルの成分
エステルワックス

 

エステルワックスを多く含む植物油:ホホバオイル

エステルワックスはホホバオイルの主成分で、ワックスという名前の通り実質はオイルではなく「ロウ(蝋)」です。油脂は脂肪酸とグリセリンが結合したものですが、エステルワックスは長さ20〜24個の炭素の長鎖線状脂肪アルコールと長さ18〜22個の炭素の長鎖線状脂肪酸がエステル結合したものです。エステルワックスは常温では通常液体ですが、5℃くらいで固形になります。

エステルワックスはは非常に酸化しづらいことと、肌への刺激がほぼなく、保湿力も高いことが特徴でアロマテラピーで好まれて使用されます。

●:炭素、:酸素

ホホバオイルに含まれるエステルワックスは、人の皮膚に含まれるエステルワックスととてもよく似た構造のため非常になじみやすいです。加齢によりエステルワックスは産生されづらくなっていき、水分が皮膚細胞から抜けていきますが、ホホバワックスを肌に補給することで肌の水分補給をし、ハリを高め、肌の感触を改善することが期待されています。